「決定力不足」とはなんぞや?

あるサイトで「決定力不足という言葉はおかしい」ということについて色々書かれてました。「点を取るスポーツなのだから、点は取って当たり前。決定力不足などと言わず『弱い』でいいじゃないか」と。

確かに、サッカーのファンの中にも「決定力不足なんて言う奴は素人」というような考え方を持つ人がいます。これは、そもそも「決定力」という言葉が「点を取ることのできる力」という、漠然とした定義でしかないという認識によるものではないか、と思われます。

しかしながら、そのサイトで「決定力不足」という言葉の珍妙さを裏付けるものとして、バレーやスキーのジャンプに置き換えている部分があったのですが、これはちょっと、ズレていた。(現在は修正されています)

バレーは多く点を取ってセットを取った方が勝ちであるし、ジャンプは飛距離に飛形点を加算して競技する。またサッカーは多く点を取った方が勝ちで、この形式で勝敗を決める競技は他にも多くあります。野球、ラグビー、バスケットボール…。陸上や水泳は純粋にタイムを競い合う競技です。確かに、これらの競技に「決定力不足」という言葉を当てはめるとおかしなことになります。特に点を争う球技については「決定力不足」などという言葉を使うのであれば、単純に「弱い」と置き換えた方が自然です。ではなぜ、サッカーでは「決定力不足」が叫ばれるのか?そこに、サッカーと他の競技との決定的な違いがあります。

それは、サッカーが他の競技に比べて極端に「点が入らないスポーツ」だからです。そのことにより1点の重みが他の競技に比べて桁違いに変わってくる。すなわち、いくらその他のプレー内容が良かったとしても点が取れないこともあるし、そのいいプレーの中で一瞬のミスで失点してしまった場合、いくら試合内容が良くても結果としては負けとなる。このことは野球にも通じる場合がありますが、ことサッカーとなるとそういうことが多々起こりうるという意味で、その性質が色濃いものとなっています。

野球の接戦、例えば1−0の完封試合の原因を考えてみると、完封はそこそこ目にすることがあっても、ノーヒットノーラン完全試合はそうそう目にするものではありません。ヒットは比較的出やすいがために打つのが当たり前だからです。単純に一試合9人×3打席でも27回はヒットを打つチャンスがあるわけです。では同じように、サッカーにおいてチャンスが27回あった試合というのを想像できますか?

上記は極端な例ですけれども(そもそもあるスポーツと他のスポーツを比べて評価を下すことはナンセンスだとは思うのですが)、サッカーではチャンスを作れない、という意味においてそのチームは「弱い」あるいは相手チームが「強い」と言うことができ、これは「決定力不足」に当たりません。なんとも曖昧な「決定力」という能力を発揮する場面がないからです。しかしながら逆説的に、絶好のチャンスが1回でもあった場合、それを決める責任はFWや、そのチャンスに遭遇した選手に課せられます。チャンスが5回あったら1つは決めねばならない。野球にすれば5打席ノーヒットみたいなもんです。

よって、サッカーが極端に点が入らない理由が「チャンスが少ない」ならば組織の問題だったり全体の能力だったりするのですが、チャンスが多数あったにもかかわらず決められない場合はそのチャンスを迎えた選手に責任があります。そのチャンスに遭遇する回数が多いのが最もゴールに近いポジションであるFWであり、また点を取る手段が右足、左足、頭など手以外のどこでもいいのですから(しかもどこで取っても1点で、2点以上は有り得ない)、そのために「決定力不足」という曖昧な言葉を使わざるを得なくなっているように考えます。

「決定力不足」という言葉の問題はこの複雑な背景において、いわゆる「にわか」の人が最初に述べた「決定力」の定義を「点が入らない」と認識している、かつ「点が入らない」という明確な理由により気軽に使えてしまうためであると思います。しかし「点が決められない」ことは「決定力不足」ただその一点によるものではなく、つまり「決定力不足」は「点が決められない」ことの理由のひとつでしかないのです。

サッカーは選手が絶えず流動的に動くことから判断の難しいスポーツです。ルールそのものは単純なのに難しい。それを認識せず「決定力不足」と断ずるのは全くもって浅はかであるといえます。だから一部のサッカーファンが「決定力なんて言う奴は素人」と評してしまうのもわからないではありません。が、点が入らないということにFWの能力不足は一因を担っているという場合が、今の日本の試合には多いから、そしてそのFWの能力不足を簡単に説明するのが難しいから(点を取る手段が多々あるためと、何もFWの仕事は点を取るだけではないため)「決定力不足」と一見とっつきやすい表現で評することが多いのです。

まあ、「にわか」がマスコミ各社にもいるような気がするんですけどね。


(文章の組み立て滅茶苦茶になっちゃった。後で直します)